過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とは慢性的な下痢や便秘といった便通異常や腹痛、腹部膨満感などがあって、内視鏡検査・血液検査・超音波検査などを行っても原因となる病変が見つからない疾患が過敏性腸症候群です。がんやポリープ、炎症といった病変のある器質性疾患と違い、腸の運動機能の問題で症状が起こっていると考えられています。患者数は日本に約1700万人と推定されていて、特に若い世代の発症が多くなっています。男性と女性ではやや女性に多く見られ、男性は慢性的な下痢を繰り返す下痢型、女性では慢性的な便秘が続く便秘型が多いとされています。

症状

過敏性腸症候群の症状はさまざまですが、主な症状により下痢型・便秘型・下痢と便秘を繰り返す混合型、膨満感などを起こすその他に分けられます。また、便通以外の症状として、胃痛や胸焼け、食欲不振、膨満感、のどの詰まる感じといった胃腸症状が起こることも多く、さらに不眠などの睡眠障害、不安や抑うつ、頭痛・肩こり、めまいなどの症状を起こすこともあります。
命の危険につながる病気ではありませんが、突然の腹痛や下痢、不安などの症状がある場合は特に、仕事や学業に支障を及ぼすケースが多く、外出ができなくなることもあります。できるだけ早く適切な治療を受けて症状を緩和させながら生活の質(QOL:Quality of life)を改善させることが重要です。

セルフチェック

消化器疾患の症状は多くの疾患で共通していますが、下記の症状の複数に当てはまる場合は、過敏性腸症候群が疑われます。

  • 慢性的に腹痛・下痢を繰り返している
  • 慢性的に腹痛・便秘を繰り返している
  • 便秘と下痢を繰り返している
  • 急激に強い腹痛があってトイレに駆け込むことがある
  • 会議や打ち合わせなどの時にお腹が痛くなる
  • テストや発表などの場面で腹痛を起こす
  • 硬くてコロコロしたウサギの糞のような便が出る
  • 急な下痢が不安で、旅行や映画などの外出が不安
  • 緊張や不安でお腹が張る・おならが出てしまう
  • お腹の調子が悪くなって1ヶ月以上続いている
  • 休日や旅行先など環境の変化で便通の状態が変わる
  • 睡眠中には症状が出ない

原因

原因はまだはっきりとはわかっていませんが、免疫異常や腸内細菌叢、睡眠、ストレス、消化管の知覚過敏や蠕動運動の乱れなどによって症状を起こしていると考えられています。腸の機能は自律神経がコントロールしているため、自律神経のバランスが乱れると症状が出やすくなります。また、神経伝達物質のセロトニンの関与も指摘されています。

過敏性腸症候群の診断について

ほとんどの消化器疾患は同じような症状を起こしますし、過敏性腸症候群も例外ではありません。炎症などの病変によって起こる他の疾患がないことを確認することが必要です。特に早急な治療が必要ながん、潰瘍性大腸炎、クローン病などの有無をきちんと確かめることが重要です。また、消化管だけでなく、膵臓や甲状腺の疾患で同様の症状を起こしていることもあります。
大腸カメラ検査であれば、粘膜の状態を直接観察でき、疑わしい病変が認められた場合には組織を採取して病理組織検査を行うことで幅広い大腸疾患の確定診断が可能です。内視鏡検査で腸に異常がないかを確認し、他の消化器系の病気もない場合に本症と診断されます。そのため当院では、一度大腸カメラ検査を受けることをおすすめしています。

過敏性腸症候群の国際的な診断基準

病変が認められない過敏性腸症候群の場合、症状から診断を行います。その際には世界的な基準として用いられているROMAⅢに則って診断されます。基準は研究が進むにつれて改訂されていて2016年に新しいROMAⅣという基準が発表されています。ただし現在も古いROMAⅢを基準として用いているケースが多くなっています。これは、ROMAⅢ基準 にあった「腹部不快感」がROMAⅣ基準 では削除されて「腹痛」のみになっていることが影響しています。患者様は腹部不快感を訴える方が多く、この症状でお悩みのケースが少なくないため診断の参考になるからです。

ROMAⅢ基準
  1. 腹痛などの症状が排便により軽快する
  2. 症状の有無によって排便頻度に変化がある
  3. 症状の有無によって便の状態に変化がある
    ※6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月の中の1ヶ月につき、少なくとも3日以上腹痛あるいは腹部不快感があり、上記(1)~(3)の2項目以上満たしている。

ROMAⅣ基準
  1. 排便により改善する
  2. 排便頻度が変化に関連する(「発症時から」と限定されない)
  3. 便の形状が変化に関連する(「発症時から」と限定されない)
    ※6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月の中で1週間に少なくとも1日以上腹痛があり、上記(1)~(3)の2項目以上満たしている。

過敏性腸症候群のタイプ

過敏性腸症候群の4つのタイプ
便秘型IBS
(IBS-C)
下痢型IBS
(IBS-D)
混合型IBS
(IBS-M)
分類不能型IBS
コロコロした便や硬い便で、
やわらかいか水様便が25%未満
やわらかいか水様便で、
コロコロした便や硬い便は25%未満
やわらかいか水様便、
コロコロした便や硬い便のどちらも25%以上
便通にはあまり問題がなく、
膨満感やガスに関する症状などを起こす

過敏性腸症群の治療

薬物療法

腸管の動きや便の硬さを調整する薬や整腸剤など、症状や状態に合わせた薬を処方します。体質改善効果が期待できる漢方を併用することもあり、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)や桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)が本症に有効なことが多いとされています。作用機序が新しい薬剤も登場していますので、市販の薬では十分な効果を得られない場合にも適切な治療が可能になることが増えています。また、ほとんどの薬剤は効果の出方に個人差がありますので、再診時にお話をうかがいながらより適切な処方へと微調整しています。

食事療法

炭水化物や、脂肪分の多い食物を摂ることが症状を悪化させることが多いことから、これらの食べ物は控えるようにしましょう。またタバコやアルコール、香辛料なども症状の悪化につながることがあるので、その場合は控えるようにします。下痢や便秘といった便通の改善には乳酸菌や食物繊維が効果的とされていますが、下痢を引き起こすような冷たい飲み物や牛乳などの過剰摂取や過度の食物線維の摂取が、逆に症状を悪化させている場合もあります。当院では、患者様の症状や体質、ライフスタイルにあった食事内容を具体的にアドバイスしています。

運動療法

便秘の症状がある場合には、適度な運動による改善効果が見込めるケースが多くなっています。ジョギングや水泳などの軽い有酸素運動を週に3回程度継続して行うようにしてください。速足の散歩、1駅分だけ歩く、1日何度か階段を使う、遠くの店に徒歩で買い物に行くなどでも構いません。

心理療法

特殊なストレッチで心身の緊張をほぐしたり、医師との会話の中で違うものの見方を発見するなどの心理アプローチも有効性が認められています。当院では親身にお話をうかがって、いっしょに解決策を探していくことを心がけています。症状について心配なことはもちろんのこと、些細なことでもお気軽にご相談ください。また、ご希望があれば認知行動療法やカウンセリングを受けられる医療機関をご紹介しています。

 

過敏性腸症候群でお悩みの方へ

過敏性腸症候群は患者様ごとに症状の出方や効果のある治療法が異なりますし、ライフスタイルやお悩みの内容にきめ細かく合わせた治療が必要になります。当院では消化器内科の専門的な診療を行っており、過敏性腸症候群に関しても豊富な症例経験と知識をベースに患者様のお気持ちに沿った治療を行っています。漢方なども取り入れて治療することもできますので、ご希望があればなんでもお伝えください。

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