過敏性腸症候群とは
症状
過敏性腸症候群の症状はさまざまですが、主な症状により下痢型・便秘型・下痢と便秘を繰り返す混合型、膨満感などを起こすその他に分けられます。また、便通以外の症状として、胃痛や胸焼け、食欲不振、膨満感、のどの詰まる感じといった胃腸症状が起こることも多く、さらに不眠などの睡眠障害、不安や抑うつ、頭痛・肩こり、めまいなどの症状を起こすこともあります。
命の危険につながる病気ではありませんが、突然の腹痛や下痢、不安などの症状がある場合は特に、仕事や学業に支障を及ぼすケースが多く、外出ができなくなることもあります。できるだけ早く適切な治療を受けて症状を緩和させながら生活の質(QOL:Quality of life)を改善させることが重要です。
セルフチェック
消化器疾患の症状は多くの疾患で共通していますが、下記の症状の複数に当てはまる場合は、過敏性腸症候群が疑われます。
- 慢性的に腹痛・下痢を繰り返している
- 慢性的に腹痛・便秘を繰り返している
- 便秘と下痢を繰り返している
- 急激に強い腹痛があってトイレに駆け込むことがある
- 会議や打ち合わせなどの時にお腹が痛くなる
- テストや発表などの場面で腹痛を起こす
- 硬くてコロコロしたウサギの糞のような便が出る
- 急な下痢が不安で、旅行や映画などの外出が不安
- 緊張や不安でお腹が張る・おならが出てしまう
- お腹の調子が悪くなって1ヶ月以上続いている
- 休日や旅行先など環境の変化で便通の状態が変わる
- 睡眠中には症状が出ない
原因
原因はまだはっきりとはわかっていませんが、免疫異常や腸内細菌叢、睡眠、ストレス、消化管の知覚過敏や蠕動運動の乱れなどによって症状を起こしていると考えられています。腸の機能は自律神経がコントロールしているため、自律神経のバランスが乱れると症状が出やすくなります。また、神経伝達物質のセロトニンの関与も指摘されています。
過敏性腸症候群の診断について
大腸カメラ検査であれば、粘膜の状態を直接観察でき、疑わしい病変が認められた場合には組織を採取して病理組織検査を行うことで幅広い大腸疾患の確定診断が可能です。内視鏡検査で腸に異常がないかを確認し、他の消化器系の病気もない場合に本症と診断されます。そのため当院では、一度大腸カメラ検査を受けることをおすすめしています。
過敏性腸症候群の国際的な診断基準
病変が認められない過敏性腸症候群の場合、症状から診断を行います。その際には世界的な基準として用いられているROMAⅢに則って診断されます。基準は研究が進むにつれて改訂されていて2016年に新しいROMAⅣという基準が発表されています。ただし現在も古いROMAⅢを基準として用いているケースが多くなっています。これは、ROMAⅢ基準 にあった「腹部不快感」がROMAⅣ基準 では削除されて「腹痛」のみになっていることが影響しています。患者様は腹部不快感を訴える方が多く、この症状でお悩みのケースが少なくないため診断の参考になるからです。
ROMAⅢ基準
- 腹痛などの症状が排便により軽快する
- 症状の有無によって排便頻度に変化がある
-
症状の有無によって便の状態に変化がある
※6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月の中の1ヶ月につき、少なくとも3日以上腹痛あるいは腹部不快感があり、上記(1)~(3)の2項目以上満たしている。
ROMAⅣ基準
- 排便により改善する
- 排便頻度が変化に関連する(「発症時から」と限定されない)
-
便の形状が変化に関連する(「発症時から」と限定されない)
※6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月の中で1週間に少なくとも1日以上腹痛があり、上記(1)~(3)の2項目以上満たしている。
過敏性腸症候群のタイプ
過敏性腸症候群の4つのタイプ | ||||
---|---|---|---|---|
便秘型IBS (IBS-C) |
下痢型IBS (IBS-D) |
混合型IBS (IBS-M) |
分類不能型IBS | |
コロコロした便や硬い便で、 やわらかいか水様便が25%未満 |
やわらかいか水様便で、 コロコロした便や硬い便は25%未満 |
やわらかいか水様便、 コロコロした便や硬い便のどちらも25%以上 |
便通にはあまり問題がなく、 膨満感やガスに関する症状などを起こす |
過敏性腸症群の治療
薬物療法
食事療法
運動療法
心理療法