医療情報

2020.11.29

過敏性腸症候群ってどんな病気?

少しずつ日中の寒さが続くようになってきましたが、皆様はいかがお過ごしですか?全国的に寒い時期になり、以前より予想されていたように新型コロナウィルス感染症が拡大してきておりますが、当クリニックにおきましても、検温・アルコール消毒の徹底、頻回の換気、発熱患者様の診察、内視鏡検査・治療時のPPE(個人防護具)の使用などにより、できる限りの感染対策を行っております。

 最近は、大腸カメラの予約が増えてきておりますので、本日は大腸の病気についてお話ししたいと思います。

 過敏性腸症候群という病気についてご存じですか?過敏性腸症候群とは、大腸カメラなどの検査を行っても腫瘍や炎症といった器質的疾患が認められないにもかかわらず、下痢や便秘などの便通異常や腹痛、腹部膨満感などの下腹部の症状が持続する病態をいいます。生命に関わる病気ではありませんが、突然起こる腹痛や下痢、腹部不快感などにより、QOL(生活の質)が低下することが問題となります。過敏性腸症候群は20~40歳代の方に多く、本邦においては10~15%程度にみられるとのデータもあり、やや女性に多くみられます。男性では慢性的な下痢を繰り返す下痢型が、女性では慢性的な便秘を繰り返す便秘型が多いとされています。

 過敏性腸症候群の明らかな原因はいまだ不明ですが、大腸や小腸の運動機能の異常や知覚過敏、精神的なストレス等が関係しているとされており、複数の要因が組み合わされることによって引き起こされると言われています。また急性の感染性腸炎をきっかけにして過敏性腸症候群が起こったり、ストレスや生活習慣により病状が悪化したりする場合もあります。

 過敏性腸症候群はメインとなる症状によって、下痢型、便秘型、混合型(下痢と便秘が交互に繰り返す)、分類不能型に分類されます。

①下痢型

突然に起こる腹痛や下痢を特徴とし、外出時に便意や腹痛を催すことで、通勤・通学などに支障をきたします。大腸のぜん動運動が過剰になることにより、大腸での便の水分吸収が不良となり、軟便や下痢が出現します。

②便秘型

便秘を主な症状とするタイプで、大腸が緊張状態となることで(痙攣性)、大腸のぜん動運動が減少し便秘が出現します。さらに便が長時間大腸に停滞することにより水分吸収が促されて、コロコロとした硬い便になります。

③混合型

下痢と便秘を数日間ごとに交互に繰り返すタイプをいいます。

④分類不能型

上記のいずれのタイプにも該当しないものをいいます。

 過敏性腸症候群の診断には、自覚症状に基づいて診断するRome IV基準が用いられますが、繰り返す腹痛が最近3ヶ月の間に概ね1週間に1回以上あり、1)腹痛と排便は関連している 2)排便頻度の変化を伴う 3)便形状の変化を伴う症状のうち、2つ以上に当てはまる場合に過敏性腸症候群と診断されます。ただし過敏性腸症候群と似たような症状を呈する病気として、細菌性・ウィルス性の腸炎、潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性の病気や大腸がんなどの病気の可能性も考えられ、血液や便検査、レントゲン検査、大腸カメラなどの内視鏡検査などを行って、他の病気が潜んでいないかを調べることも大切です。当クリニックでもこのような可能性が疑われる場合には、積極的に必要な検査を施行して、的確な診断ならびに早期の治療につなげていけるように診療を行っております。

過敏性腸症候群は、生活習慣の乱れや精神的なストレスなどで症状が悪化することが多いことから、まずは生活習慣の改善やストレスの軽減を図りますが、運動療法も症状の改善に有効とされています。また、症状のタイプに合わせて薬物療法も併用します。

①食事療法

炭水化物や脂肪分の多い食べ物をとることが症状を悪化させる要因となることがあることから、このような食べ物は控えるようにしましょう。また香辛料やアルコール、コーヒーなどが症状悪化に関係している場合もあり、この場合も摂取を控えるようにします。下痢に対しては、適量の食物線維をとるようにしながら、下痢を引き起こすような冷たい飲み物や牛乳の過剰な摂取は避けるようにしましょう。便秘に対しては食物線維を積極的にとり、便の量や硬さを整えるように心がけましょう。

②運動療法

適度な運動を取り入れることにより、腸の動きを整えましょう。また適度な運動はストレス発散にもつながり、過敏性腸症候群の発症や悪化の原因となるストレスを軽減させることができます。

③薬物療法

生活習慣の改善で症状が良くならない場合は、薬物療法を行います。

1)セロトニン3受容体拮抗薬

腸に存在する神経伝達物質であるセロトニンをコントロールすることで、過敏性腸症候群の症状を改善します。下痢型の過敏性腸症候群に用いる薬剤であり、以前は男性のみに使用されていましたが、現在では女性に対しても使用が認められています。女性の方が副作用として便秘が生じやすいと言われています。

2)消化管運動改善薬

下痢型、便秘型のいずれにも使用します。下痢型に対しては腸の動きを抑え、便秘型に対しては腸の動きを活発にすることで効果を発揮します。

③)乳酸菌製剤

腸内環境を整え、下痢や便秘、腹部の不快な症状などを改善します。

④便秘薬

便秘型に対して使用します。大腸に水分を取り込むことにより便を軟らかくしたり、腸を刺激して便を出しやすくします。最近では、腹部の不快な症状を改善させる効果のある薬剤も登場しました。

⑤止瀉薬

これとは逆に下痢型で、下痢の症状がひどい場合などに頓服で止瀉薬を用いることもあります。

⑥漢方薬

下痢型や便秘型といった病型や、体質(体力や冷えの有無など)にあわせて処方薬を選択します。当クリニックでも通常の薬剤で効果が乏しい場合には積極的に漢方薬を使用しています。この他、うつ状態や不安が強い(トイレに行けない不安など)場合に抗不安剤を使用することもあります。

 今回は過敏性腸症候群について説明させて頂きました。もし上記に当てはまるような症状がある場合は、本症の可能性がありますので、ご遠慮なくクリニックまでご相談下さい。先ほども述べましたように、他の病気で似たような症状を起こす可能性もありますので、最近まで採血検査や大腸カメラなどの検査を受けられていない方は、一度検査を受けることをお勧めいたします。当クリニックでも鎮静剤を用いた苦痛の少ない大腸カメラ検査を日々行っております。ポリープが見つかった場合には必要に応じて日帰り大腸ポリープ切除も積極的に行っておりますので、ご心配な方はいつでもご相談ください。24時間のWEB予約からも大腸カメラの予約が可能となっておりますので、ご希望の方は是非WEB予約からご予約ください(電話での予約も可能です)。夜間はかなり冷え込むようになってまいりました。体調には十分お気を付けてお過ごし下さい。

 

 

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